演 題 「理想」の図書館をもとめて

        紀州徳川家当主たちの夢、明らかに

 今は昔、侯爵徳川頼倫は、全国図書館大会の開会にあたり和歌山市公会堂に集った人々を前に、図書館の活用について、日本図書館協会総裁として、また「郷人の一人として」熱弁をふるいました。今年の大会のテーマにある「南葵から新しい時代へ想いを繋げる」にちなみ、私の講演では、英国で南方熊楠から図書館のもつ意義を説かれた徳川頼倫が、日本の図書館発展のために歩んだ道をたどり、彼が図書館にもとめた「理想」を現代に照らしあわせ紹介してみます。

 和歌山には徳川頼倫が設立した「南葵文庫」を偲ぶ資料が残されていますので、建物は失われて久しいのですが、皆様をバーチャル「南葵文庫」ツアーにご案内する予定です。建築や催し物から、揺籃期の図書館界にあって、ひとつの私設図書館がもとめた「理想」を感得していただければと思います。

 また、頼倫の爵位をついだ長男徳川頼貞は、「南葵文庫」中にMusic Room を設け、それは当時東洋一の音楽専門図書館と言われた「南葵音楽図書館」に発展しました。その貴重な蔵書は、現在「南葵音楽文庫」として和歌山県立図書館が承継しています。書庫にならんだ資料からは、図書館人として生きた紀州徳川家の当主たちの「理想」が、また大震災、恐慌、戦争に見舞われながらも堅持した図書館界への貢献意志が、いまも滲み出てくるかのようです。

講 師  美 山 良 夫(みやま よしお) 氏

(慶應義塾大学名誉教授)

【 出身地 】1946年東京都生まれ
【 略 歴 】
慶應義塾大学文学部、同大学院(美学美術史学専攻)終了
慶應義塾大学文学部教授、同大学アート・センター所長
同大学デジタル・メディア統合研究センターにて南葵音楽文庫貴重資料デジタル化プロジェクト・リーダー
公益財団法人読売日本交響楽団理事、NPO法人芸術家のくすり箱理事長等を歴任
大和市(神奈川県)の「シリウス」運営審議会会長として「図書館城下町」を推進
2017年から和歌山県立図書館の南葵音楽文庫関連事業に協力
【 主な著書 】
『音楽史の名曲』(共著、春秋社、1981)
『フォーレ:ピアノ音楽全集』(校訂等、春秋社、全5巻、1986~2006)
『文化観光:観光のリマスタリング』(共著、慶應義塾大学アート・センター、2010)